相続する不動産名義変更の方法
司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。
相続不動産の名義変更はどのように行うのか。
相続が発生するとまず故人の生前の意思が優先され遺言書の内容でその意思が明らかにされます。
遺言書があり法律的に有効なものであれば基本的には遺言書に従って不動産の名義変更による移転登記を行います。
遺言書が法律的に無効の場合や遺言書が無い場合は相続人全員で話し合い、遺産となる不動産を相続人全員の遺産分割協議に基づき不動産の名義変更による移転登記を行います。
また遺産分割が出来ない事情があるがどうしても不動産の名義変更をしておきたい場合は相続人の1人から法定相続分に従って移転登記をすることも可能です。
相続人を確定させる
相続人を確定させるためにまず戸籍を集める
遺言書がある場合でも自筆で作成されているケースでは形式的な不備がないか故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で確認(遺言書の検認手続き)をしてもらう必要があります。
遺言書の検認手続きの申立にあたっては法定相続人を確定させるために戸籍(故人に子供がいる場合などの第一順位では故人の出生から死亡までの戸籍と相続人全員の現在戸籍)が必要になります。
但し、公正証書で作成されている遺言書の場合は上記の家庭裁判所への検認手続きは不要でまた故人の死亡記載の戸籍と相続人の現在戸籍があれば法定相続人を確定させる必要がないため集める戸籍は少なくなります。
遺言書が無く相続人全員で遺産分割協議に基づき登記を行う場合は法定相続人を確定させるための戸籍(故人に子供がいる場合などの第一順位では故人の出生から死亡までの戸籍と相続人全員の現在戸籍)が必要となります。
余談ですが遺言書が無く故人に子供がいない配偶者と故人の兄弟姉妹が相続人(第三順位)となるケースでは集める戸籍は膨大な量となります。
それは故人の兄弟姉妹を確定するため故人の出生から死亡までの戸籍以外にも故人の両親についても父親と母親それぞれの出生から死亡までの戸籍を集めます。
さらに故人の兄弟姉妹が亡くなっている場合は亡くなっている兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍を集めて子供である甥姪が相続人となることを確定するため戸籍の枚数も膨大となってしますからです。
相続人の中に家庭裁判所で相続放棄をした人や特別受益者がいないか確認する
家庭裁判所で相続放棄をした相続人がいる場合
家庭裁判所に相続放棄の申立を行い申述が受理されている場合は相続放棄申述受理証明書という書類を家庭裁判所へ請求出来ますので交付を受けるようにしてください。
この相続放棄申述受理証明書は不動産の相続登記の申請書に添付する必要がありますので事前に準備しておく必要があります。
ここで注意が必要なのが家庭裁判所から相続放棄の受理通知書というものが交付されますがこの通知書は不動産の相続登記では相続放棄の証明書として添付しても認められないということです。
印紙代はかかってしましますが相続放棄申述受理証明書の交付を受けるようにしてください。
特別受益となる相続人がいる場合
故人から遺贈や生前に婚姻、養子縁組、生計の資本として贈与を受けた相続人が特別受益者となり受けるべき相続分が無いケースでは特別受益者から特別受益証明書と印鑑証明書を発行してもらい、不動産の相続登記申請の際に添付する必要があります。
相続財産も確認しておく
相続財産額の確定
不動産の相続による移転登記に関しては対象不動産の確認で足りますが、その他の預貯金や有価証券、現金、債務なども確認した方がよろしいかと思います。
遺産額が確定することによって相続税の申告(基礎控除は3,000万円+(600万円×法定相続人の頭数))の有無や借金が多い場合は相続放棄の検討なども出来ます。
遺産分割協議を行う
相続不動産の登記名義人を確定し登記申請を行う
相続人間の遺産分割協議が可能となれば特定の相続人を不動産の登記名義人とするのか、もしくは法定相続分に従って各相続人が登記名義人となり移転登記をするのか決める必要があります。
不動産の登記名義人が複数の場合は登記の申請人の表示欄には持分を記載する必要がありますので相続する持分を遺産分割協議で決めます。
もし遺産分割協議を行う相続人の中に認知や未成年者などの意思能力が不十分な人がいると、家庭裁判所に成年後見人や特別代理人などの申立てを行い選任のうえ代理人が本人に代わって遺産分割協議に参加し署名捺印(実印)することとなります。
なお、遺産分割協議に基づく移転登記では登記申請の際に添付するおもな書類として相続関係を証明するために集めた故人や各相続人の戸籍書類や相続人全員が署名捺印(実印)した遺産分割協議や各相続人の印鑑証明書や故人の住民票の除票のほかに登記名義人となる相続人は住民票が一般的に必要となります。
余談ですが実務では相続関係を証明するために提出した戸籍書類を提出先の管轄法務局から原本を返却してもらうために故人と相続人との関係を要約した相続関係説明図を作成して登記申請の際に提出します。
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相続手続きは多くの方の人生にとって数回あるかないかの手続きかと思います。
故人に対する悲しみも消えない中で手続の窓口に行くと専門的な用語や慣れない煩雑な手続で肉体的にも精神的にもさらに負担がかかってしまいます。
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