特定財産承継遺言がある場合の遺言執行者の登記申請権限

司法書士山本宣行のコラムです。

ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。

遺言執行者の権限の見直しについて

令和元年7月1日から施行されている相続法改正に伴う「遺言執行者の権限の明確化」の中で新民法1014条第2項の特定財産承継遺言がある場合において遺言執行者に不動産の名義変更による相続登記等の対抗要件を具備する権限を与えています。
本コラムでは「特定財産承継遺言がある場合の遺言執行者の登記申請権限」とはどのような内容となっているのかポイントを説明をしていきたいと思います。

特定財産承継遺言とは

特定財産承継遺言という聞きなれない法律用語が出てきましたが要は亡くなった故人が不動産や預貯金といった特定の遺産について遺産分割の方法を指定して共同相続人の1人又は数人に承継させる旨を記載した遺言書のことをいいます。
ちなみに民法908条で定める遺産分割方法の指定については大まかに①特定財産を特定の相続人に承継させる旨を指定する場合や②遺産分割するための分割方法の手段等(現物分割・代償分割・換価分割)を指定する場合や③財産を換価処分後に清算して分配するように指定する場合等があります。

従来の相続登記の実務では

新法改正前の相続登記の実務においては特定の不動産を特定の相続人に相続させる内容の遺言があり遺言執行者が指定されていた場合でも遺言執行者が受益相続人の代わりに相続登記を申請する行為は認められていませんでした。
遺言執行者による相続登記申請が認められなかった理由として非常に分かりづらいですが過去の判例が示した考えで主に以下の理由が挙げられています。

◎相続させる旨の遺言は特段の事情がない限り遺産の一部分割と同様の効力があるため、相続開始と同時に受益相続人に承継されるため、不動産がすでに遺言執行の対象でなくなってい  るという理由

◎不動産を相続させる旨の遺言による相続人は単独で相続登記の申請を行うことが可能とされており、不動産が被相続人の名義である以上は遺言執行者の職務が顕在化していないため相続登記の申請を行うべき権利義務も有しないという理由

新民法適用後の相続登記実務では

第1014条 新民法(特定財産に関する遺言の執行)
  前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。

第899条の2 新民法(共同相続における権利の承継の対抗要件)
  相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができない。

今回の相続法の改正で上記新民法の条文のとおり特定財産承継遺言による権利承継について不動産においては相続登記といった対抗要件の具備に必要な行為を遺言執行者の新たな権限としているため相続登記実務の運用も見直されていくと考えられています。
なお一部問題が指摘されている点についても触れますと新民法第1014条第2項で遺言執行者は共同相続人が新民法第899条の2第1項に規定する対抗要件を具備するために必要な行為をすることができるとしているため単純に条文からは遺言執行者の対抗要件を具備するための権限は法定相続分を超える部分にしか及ばないのではとの解釈も成り立ってしまうということです。
ただし相続登記の申請では法定相続分と超える部分を分けて申請することは手続上出来ないことを考えられるとそのような解釈から遺言執行者の対抗要件を具備するための相続登記申請が妨げられてしまうことは新法で遺言執行者の権限の適用範囲を広げて取引安全の保護を図った趣旨に反してしまうことから特定財産承継遺言による不動産の登記申請では遺言執行者からの相続登記申請は認められるであろうと考えるのが自然と思われます。

まとめ

遺言書は様々な家庭事情や残される相続人が困ることのないよう作成しておけば残された家族にとって安心でありがたいものになることは間違いありません。
相続法の改正に伴い遺言にまつまる法律も変更されており手続き等で押さえるべきポイントや変更点もありますので遺言書の作成を検討されている方や相続が発生した場合には速やかに相続登記や相続手続きを行えるよう専門家などにご相談されることが重要といえます。

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