遺言作成方式と遺留分

司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。

遺言の方式によるメリット・デメリット

自筆または公正証書で作成するかを検討する

遺言書を作成する場合の方式として民法でいくつか規定されておりますが一般的な遺言書として大きく分けると自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
最も簡単な方法は自筆証書遺言であり費用をかけずにどこでも作成可能なため自筆証書遺言での作成を希望される人も多いですが簡便であるがために後から証書の効力を争われ否定されてしまうこともあるようです。
自筆証書遺言と公正証書遺言に関して作成した場合に考えられる主なメリットとデメリットを下記表で説明してありますので参考にしてみて下さい。
確実に安心出来る遺言書としては公正証書遺言での作成をお勧め致します。

自筆証書遺言

メリット
  • どこでも1人で作成可能
  • 費用がかからない
  • 遺言書の内容を他人に見られないで作成可能
デメリット
  • 証人がいないため故人の意思で本人が書いたものか判別不明で相続人間の争いとなるおそれがある。
  • 相続発生時に発見されない場合や破棄されてしまうおそれもある
  • 要件を欠いて無効とされる場合や偽造されるおそれがある
  • 相続発生後に家庭裁判所に検認手続きの申立てが必要となり煩雑で知られたくない法定相続人全員に家庭裁判所から通知が送られてしまう

公正証書遺言

メリット
  • 公証人と証人2名立ち合いのもと作成し本人の意思能力を確認しているため相続人間で無効を争われる可能性が少ない
  • 作成原本は公証役場に保管されるため破棄・焼失などがあっても謄本の交付を請求できる
  • 遺言の要件形式などは公証人も確認するため要件無効にならない
  • 相続発生後に家庭裁判所で検認手続きの申立てが不要で疎遠となった相続人に通知をされることもない
  • 文字が書けない場合でも意思疎通が出来れば作成可能
デメリット
  • 公証人の手数料や専門家に依頼する場合の費用手間がかかる
  • 遺言書の内容が証人に知られる

遺留分に注意する

遺言書を作成した場合でも遺留分は請求される可能性がある

自筆証書遺言と公正証書遺言どちらで作成しても相続人の遺留分を侵害した場合は侵害された相続人が遺留分の請求を求めてくることがあります。
この遺留分相当額の返還請求を遺留分減殺請求権といいます。
民法で定める一定割合の遺留分を認めなければなりませんがこの遺留分の割合は基本的には以下のとおりです。(参照 民法1028条)
なお、相続人が兄弟姉妹の場合には遺留分が認められておりません。

(1)相続人が配偶者や子供などの場合は被相続人の財産の2分の1となります。
基本的に各相続人の個別的な遺留分を計算する場合、法定相続分の半分ということになり以下のような計算となります。
例:相続人が配偶者と子供3人のケース

(法定相続分)

  • 配偶者の法定相続分:2分の1
  • 子供の法定相続分:2分の1×3人=各6分の1

(個別の遺留分)

  • 配偶者の遺留分:2分の1×2分の1=4分の1
  • 子供の遺留分:6分の1×2分の1=各12分の1 となります。

(2)相続人が両親などの直系尊属のみの場合は被相続人の財産の3分の1
例:相続人が父母2人のケース
(法定相続分)

  • 父母の法定相続分:各2分の1

(個別の遺留分)

  • 父母の遺留分:2分の1×3分の1=各6分の1  となります。

このように遺言書も作成しても遺留分請求という大きな権利が相続人に留保されますので、遺留分への対応なども配慮して遺言書の作成を検討していかなければなりません。
但し、遺留分権利者が相続の開始及び減殺請求すべき贈与または遺贈があったことを知ってから1年もしくは相続開始から10年経過すると時効によって消滅することになります。(参照 民法1042条)

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