遺贈された不動産に農地があった場合の名義変更手続

司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。

遺言書で農地を遺贈された場合

故人の残した遺言書の財産の中で不動産があり、その不動産が農地で遺贈(贈与)するとした記載の場合には相続による不動産の名義変更手続きと比べた場合に土地の登記申請に関する必要書類や申請人などが異なりますので注意が必要です。
農地を譲り受ける人間が法定相続人の場合や孫や甥姪などの法定相続人以外の第三者の場合との違いや遺言書の農地の遺贈について遺言執行者が選任されている場合と選任されていない場合とでは、どういった違いがあるのかポイントを説明をしていきたいと思います。

遺贈には包括遺贈と特定遺贈がある

遺言により行われる遺贈ですが、この遺贈には民法964条で包括遺贈と特定遺贈が定められています。

遺言の包括遺贈

例えば遺贈の対象となる財産を特定しないで「一切の財産を遺贈する」や「財産の2分の1を甲に遺贈する」というように財産の全部または一部を割合的に遺贈させることを包括遺贈といいます。
相続財産の全部や相続財産の割合を定めた一部の財産を無償で与えるものでプラスとなる積極財産だけでなくマイナスとなる消極財産も承継することになるため注意が必要となります。
したがって、包括遺贈によって遺産を承継すると受遺者は相続人と同じような立場となります。
(参考 民法990条)

遺言の特定遺贈

例えば遺贈の対象となる財産を特定して遺贈させる場合で「横浜市青葉区〇〇番地の土地を甲に遺贈する」というように遺言で遺贈させることを特定遺贈といいます。

農地法所定の許可について

農地について所有権移転を行う場合には原則として農地法の許可を検討しなければなりません。
事前に農業委員会での許可手続きが必要となる場合において所有権の移転登記を管轄法務局へ申請する際には農業委員会の許可書を提出しないと移転登記は却下されて受付けて貰えないからです。
農地法の許可は遺贈以外でも生前贈与、死因贈与、売買、交換、共有物分割、信託などでも必要となりますので注意が必要です。
エリアや条件によっては農業委員会の許可を貰えない場合もあるため、事前に農地が所在する市町村の農業委員会へ確認しておく必要があります。
ちなみに相続を原因とする所有権移転登記の場合は被相続人の死亡の事実により当然生じるもので権利移転のための行為があるわけではないため行政処分の対象とならず農地法の許可は不要となります。
余談ですが農地法の改正で相続や遺贈により土地の名義変更を行い農地を所得した場合でも農業委員会へ取得した旨の届け出を提出しなければならないこととなりましたので忘れないように注意が必要です。
(参考 農地法3条の3)

包括遺贈の場合

包括遺贈で農地を取得する場合には法定相続人以外の孫や甥姪などの第三者でも相続に類似する遺産承継となりますので法務局への遺贈登記による土地の名義変更には農地法の許可書の提出は必要ありません。

特定遺贈の場合

特定遺贈で農地を取得する場合には法定相続人と孫や甥姪などの法定相続人以外の第三者で取り扱いが異なります。
(参考 平成24・12・14民二3486)

・法定相続人の場合
→農地法の許可書の提出は不要。

・法定相続人以外の第三者の場合
→農地法の許可書の提出は必要。

遺贈による登記の申請人になるのは

相続を原因とする土地建物の移転登記は相続人による単独申請となりますが、遺贈による土地建物の移転登記で不動産の名義変更登記を行う場合には、登記権利者と登記義務者が共同して法務局へ登記申請を行わなければなりません。
登記権利者となるのは遺贈で土地建物を取得する受遺者となりますが、登記義務者である遺言を書いた遺贈者は既に亡くなっているため遺贈者の法定相続人または遺言執行者が登記義務者となります。
遺言執行者が選任されていない場合
遺贈者の法定相続人全員が土地建物の登記義務を承継するため一部の者だけでは登記申請を行うことが出来ません。
登記義務者となる法定相続人が全員そろっているかどうかの確認として故人の出生から死亡までの戸籍謄本などの相続証明書の提出が登記申請で求められることになります。
したがって、法定相続人の中に認知症や音信不通など協力が得られない者がいると別途家庭裁判所へ遺言執行者の申立てが必要となる場合があります。
遺言執行者が選任されている場合
遺言執行者の選任がされている場合には遺言執行者が土地建物の登記義務者となり不動産の名義変更登記を行うことになります。
遺言執行者の資格を証する書面が登記申請の際に提出を求められますが以下の書面となります。
遺言書により指定されている場合
・遺言書及び遺言者が死亡した記載のある除籍謄本など。
 ※自筆で作成した遺言書は家庭裁判所の遺言検認調書の謄本を資格を証する書面とすることも可能です。
(参考 平成7・6・1民三3102)
家庭裁判所が選任した場合
・家庭裁判所の遺言執行者の選任審判書

遺贈による登記の登録免許税

土地、建物の遺贈を受ける者が法定相続人以外の第三者である場合には、対象となる不動産の固定資産評価額の2%が登記申請の際に法務局へ納める登録免許税となります。
ただし、受遺者が法定相続人の場合は故人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人の戸籍などの相続証明書を提出すれば納める登録免許税は対象となる不動産の固定資産評価額の0.4%となりますのでかかる費用が大きく変わってきますのでご注意下さい。

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