遺産分割等に関する見直しについて

司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。

相続法制の見直しについて

相続法制の見直しについて平成30年7月13日に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)」が公布されました。
「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」の施行期日は平成31年7月1日とし、同法附則第1条第4号に掲げる規定(配偶者の居住権を保護するための法律に関するもの)は平成32年4月1日を施行期日としています。
また遺言制度に関する見直しに関しては「自筆証書遺言の方式緩和に関する法律」は平成31年1月13日を施行期日としており、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」は平成32年7月10日を施行期日としています。
このように実際の法律の施行期日としては、段階的になっておりますので注意が必要です。
相続法の見直しは、昭和55年の改正以来となり一般市民や実務に与える影響も大きなものとなりますが本コラムでは「遺産分割等に関する見直し」の改正内容についてポイントを説明をしていきたいと思います。

配偶者保護のための方策として

現行法では各相続人の相続分の算定について、民法で以下のような規定になっています。
現民法903条1項
「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする」
上記の規定では生前に相続人が被相続人から受けた贈与の財産や遺贈で取得した財産は特別受益にあたるものとして財産を取得した相続人の相続分からその財産の価額を控除するという事になります。
法律用語ではこのような計算を「持ち戻し計算」といいます。
この持ち戻し計算が行われた結果として被相続人が生前に遺言書で持ち戻しを免除する意思表示をしていない限りは被相続人から受けた贈与又は遺贈の財産価額がその相続人の相続分を超過してしまうと相続分を受けることができなくなってしまいます。
仮に、被相続人の配偶者が贈与又は遺贈を受けている場合に遺言書で持ち戻し免除の意思表示をしていないと取得した財産価額により相続発生時に遺産を取得出来なくなることもあるため、配偶者の保護に欠けてしまう可能性も家族のケースによっては発生してしまいます。

見直しのポイント

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で居住用不動産について遺贈又は贈与がなされた場合には、被相続人は遺贈又は贈与について持ち戻し免除の意思表示があったものと推定されるようになります。
たしかに被相続人が配偶者へ遺贈又は贈与を行う場合には相続発生後も配偶者の保護が図られることが普通に考えると本来の被相続人の意思を尊重し合致しているように思えますので見直しがなされて解釈的に自然になったように感じられます。

注意ポイント

持ち戻し免除の意思表示推定の対象財産は居住用不動産となりますが、居住用不動産の構造や形態については注意が必要かもしれません。
居宅兼事務所や店舗である建物について
全てが適用されるのではなく居住用部分にのみ適用されるものと考えられますが、被相続人の趣旨など適用部分については判断材料がいくつか分かれてくる部分であるように思えますので今後の裁判所の解釈判断を待ちましょう。
居住用要件の基準時について
適用される基準時については遺贈又は贈与時と考えられますが、複数の不動産があり転居が繰り返されている場合にも複数の不動産が居住用として適用されるのか否かもはっきりしないところではあります。
また将来的に居住用にする目的の不動産を贈与した場合なども適用が及ぶか否か疑問が残る部分かと思われます。

遺産分割前の払い戻し制度について

相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用などの支払い、被相続人の債務に関する弁済など相続人が遺産分割する前に必要な資金の需要に対応すべく遺産分割前の払い戻しに関する方策が創設されています。

①保全処分の要件を緩和する

従来では調停や審判等で関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときなど限定的な場合にしか仮分割の仮処分を利用することができなかったところ、預貯金債権に限り従来の家事事件手続法を改正し要件が緩和されることになります。

注意ポイント
保全処分の緩和に関しては仮払いの必要性があると認められ、他の共同相続人の利益を害しないということが前提となり家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようにするものなので、要件が緩和されるといっても調停や審判などの手続が行われることで必然的にある程度の時間がかかってしまうことは否めないと考えられます。

②家庭裁判所の判断を必要とせずに払い戻しが得られる制度を創設する

被相続人が遺した預貯金債権の一定割合に関しては、家庭裁判所の判断を必要とせずに、金融機関の窓口で払い戻しが受けられるようにする制度となります。
従来も金融機関によっては、葬儀費用の請求書などを提出すると費用分の簡易的な払い戻しに応じてくれる場合もありましたが、確実に制度化することは好ましいといえます。
また上記①の保全処分の要件緩和に比べると、金融機関の窓口対応となるためスピーディーに相続人の資金需要に対応できるのではないかと思われます。

注意ポイント
払い戻しに応じる預貯金債権はあくまでも上限額が決められた一定割合での対応となるため、ある程度の生活資金を必要とする相続人がいる場合には、やはり円満かつ速やかに遺産分割協議を終了させて、金融機関の窓口で必要書類を提出のうえ、相続解約手続きを行う必要があります。

遺産分割前に遺産を処分した場合の遺産の範囲について

現民法907条では遺産の共有状態の解消は遺産分割の方法によって行うことを定めています。
現行法で問題とされているのは、遺産分割の対象とされるのは、①遺産が相続開始時に被相続人の遺産であること、かつ、②遺産分割時にも存在する財産であることとなっています。
つまり、共同相続人の1人が遺産を遺産分割前に勝手に処分をしてしまうと、遺産分割時には存在しないため処分をしなかった場合と比較して計算上、取得額が増えてしまうといった不公平が共同相続人に生じてしまう可能性が発生してしまうことになります。
実務で考えられるケースではATMカードと暗証番号を知っている相続人が遺産分割前にあらかじめ被相続人の預貯金を引き出してしまうといったことも否定できないからです。
そういったケースに備え遺産分割において共同相続人間の不公平を改正における見直しで解消しようとしています。

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