中小企業経営者が相続発生後の事業承継を円滑に行うには

司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。

相続を見据えた後継者への承継を円滑にするために

自社株を全て所有している中小企業経営者にとって、亡き後に後継者と考えている子供が他の兄弟姉妹と揉めないように円滑・円満な事業承継をどのように行っていくべきか非常に悩ましい問題と考えられます。
また亡くなる前のある程度元気なうちに後継者となる子供を見極め、会社を引き継ぎ引退されたいと考えている方もいらっしゃるのではないかと思います。
下記に事例をあげて成年後見制度と家族信託制度を利用した場合や何もしなかった場合にどのような違いが生じるのか簡単に説明したいと思います。

事例 家族の状況

・現状では、高齢の父甲が100%の株主になっており、年齢を考えると数年後に体調不良や認知症な
 どで株主としての権利行使や判断が出来なくなるため、会社経営上のリスクがあります。
・子供は長男乙と次男丙がいます。
長男乙は数年前に父甲の会社に入社し後継者として育てている最中です。
・長男乙にすぐに経営権を渡すつもりはなく、長男乙の様子をみながら数年後に会社を引き継ぎ引退出来れば
 と
考えています。
 ただし、
次男に残してやれる金融資産ではバランスが取れないため次男ともめてしまわないか不安がある。


上記事例における将来の検討

何もしない場合

父甲の年齢を考えると数年後に体調不良や認知症といった病などで判断能力が喪失した状態になってしまう場合が考えられます。
上記のような病で判断能力が無くなってしまうと会社経営がストップしてしまうおそれがあります。
また、父甲の相続が発生してしまうと会社の株式が長男乙と次男丙2名の準共有となり、会社経営についての判断として次男丙の判断が必要になってしまいます。
仮に次男丙に相続が発生してしまった場合には株式がさらに次男丙の相続人へと細分化してしまうおそれもあります。
長男乙が株式の準共有を回避するためには、次男丙の法定相続分に相当する代償金の用意をして支払う必要が考えられます。
もし父甲が遺言で自社株は全て長男乙に相続させる遺言を作成して遺した場合でも、次男丙には遺留分があるため、遺留分相当額の支払いを行わなければならない可能性も出てきてしまいます。

成年後見制度を利用する場合

父甲が認知症などで判断能力が無くなってしまうと会社経営がストップしてしまうため、成年後見制度の申し立てを行う必要が出てきますが、父甲の成年後見人となる者が親族になるとは限らず司法書士や弁護士等の専門家が家庭裁判所の判断で選任されてしまう可能性もあります。
つまり、会社経営として無関係な赤の他人が会社の議決権行使の影響力を持ってしまうことになります。
父甲が亡くなれば後見は終了となりますが、相続が発生するため、株式が長男乙と次男丙の準共有となってしまい、前述のように会社経営上の問題や権利関係が複雑となってしまう可能性があります。

家族信託制度を利用する場合

自社株の所有者である父甲を委託者、後継者として考えている長男乙を受託者、配当などの利益を受ける権利や実質的な会社の権利を父甲とする受益者として会社株式などを信託財産とするような信託契約を父甲と長男乙が行います。
また父甲が元気なうちには父甲を指図権者として定めておけば、今まで同様に株主総会における議決権を行使して会社経営を行いながら、長男乙の仕事ぶりを見極めながら段階的に権限を長男乙に任せていくような契約も可能となります。
父甲が判断能力を喪失しても受託者として長男乙が会社経営を継続できることになります。
また、相続発生時の問題である次男丙への配慮として父甲亡き後の第2受益者として長男乙と次男丙として契約に定めておけば株主としての権利行使は全て受託者である長男乙に集約できるため、会社経営を細分化させずに安定させることが可能となります。
いっぽうで次男丙は受益者として株式の配当を受けることが可能となるため無議決権株式を保有しているのと似たような状況で会社経営には口を出す必要がなくなります。
契約で次男乙の受益権を第三者へ勝手に売却譲渡を禁止することも定めることができ、長男乙に資金の余裕かできれば次男丙から買い取ることも可能です。

 

 

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