親亡き後の問題 その2

司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。

障害のある子供が相続税法の特定障害者に該当する場合

前回のコラムでは障害を持つ子供のご両親の多くが抱く親が亡くなった後の子供に対する財産管理を家族信託や後見制度などを併用しながら守っていく手続きを記載しましたが、本コラムでは生前に障害のある子供へ高額な金銭を生前贈与したいと考えていらっしゃる方のお話となります。
通常親から子供へ高額な金銭を生前贈与すると莫大な贈与税が取得者に課税されてしまいますが、信託銀行などを受託者として信託を行う場合には3000万円又は6000万円を限度に贈与税が非課税となる特定障害者扶養信託契約という特例制度があります。この特定障害者扶養信託契約を信託銀行などと結び特定贈与信託を行うと贈与税の非課税枠を利用しつつ受託者となった信託銀行などが金銭を定期的に特定障害者へ交付することができ、子供が亡くなった後の残余財産の帰属先を定めておくことも可能となります。
この制度の効果や注意ポイントなどを説明していきたいと思います。

特定障害者扶養信託契約の効果とは

信託の原則的な課税方法として受益者に発生時に課税する方法としているなかで特定障害者扶養信託契約は障害者の経済的な安定を図るための税制上の優遇措置として、扶養目的で特定の障害者を受益者とする信託契約について信託受益権の価額のうち、特別障害者の場合は6000万円、特別障害者以外の特定障害者の場合には3000万円までが贈与税の非課税枠となり課税されることなく贈与可能ということになります。
(参考 相続税法21の4)

「特別障害者」と「特別障害者以外の特定障害者」の区分

特別障害者

・精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にある者又は重度の知的障害者
・重度の精神障害者
・1級又は2級の身体障害者手帳所有者
・特別項症から第3項症までの戦傷病者手帳所有者
・原子爆弾被爆者
・常に就床を要し、複雑な介護を要する者のうち重度の者
・65歳以上の重度の障害者

特別障害者以外の特定障害者

・中軽度の知的障害者
・2級又は3級の精神障害者保険福祉手帳保有者
・65歳以上の障害者

非課税枠の活用にあたっての注意すべきポイント

・信託契約の受託者となるのは信託会社及び信託業務を営む金融機関に限られますので個人が受託者となること
   はできません。
(参考 相続税法省令4の9)
・納税地の所轄税務署長に「障害者非課税信託契約書」を財産が信託されるまでに受託者を経由して申告しない
   と贈与税の非課税の適用を受けることができない。
・信託した財産が他の相続人の遺留分を侵害する場合に遺留分権利者が遺留分を請求して信託財産が減少又は
   消滅するような場合にはその減少した財産については初めから非課税の適用がなかったものとして扱われて
   しまうことになります。
   このような場合には税負担が発生することになってしまうため注意が必要となります。
・契約は受益者である特定障害者の死亡まで続くため、取消しや合意終了、信託期間、受益者の変更は出来ない
   ことになります。

非課税枠活用のまとめ

多くの親にとって子供を想う気持ちは子供がいくつになっても色あせず深いもので親の存在の有難みを私自身も日々感じさせられます。特に障害のお子様を持つ親御様にとって子供に対する深い愛情と同時に将来の心配や不安ははかり知れないかと思います。
本コラムをご覧頂いて少しでも親御様のご不安やご負担が軽減できるヒントの一助になって頂けたら幸いです。

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