任意後見契約後の監督人選任申立てを行う場合

司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。

任意後見契約を発効するには

任意後見制度においては、本人の判断能力がしっかりしているうちに、将来に不安を感じて判断能力が低下した段階であらかじめ信頼のおける家族や親族等に財産の管理等をしてほしいという本人の希望を実現させることが出来ます。
後見人が家庭裁判所の裁量で選任されてしまう成年後見制度と比べて本人の意向に沿った手続きといえます。
実際に信頼のおける家族等と公正証書で任意後見契約を結ぶと契約を行ったことについては公証人が法務局に嘱託して登記がなされます。
但し、この段階では任意後見契約が発効される訳ではありませんので本人の財産管理方法は今までと変わらないままということになります。
本人の判断能力が低下した段階で家庭裁判所に申立てをして任意後見人を監督する任意後見監督人が選任されることによってその効力が発生し任意後見人となった家族等があらかじめ契約で決めた本人から委託された財産管理事務について代理権を行使していくことになります。
任意後見契約後の監督人選任申立てにあたって、基本的な確認しておくべきポイントなどを説明させて頂きます。

任意後見契約を発効する申立てはどこに行うのか

家庭裁判所には管轄がある

任意後見監督人選任を行う窓口は判断能力を失った本人(任意後見契約の委任者)の住所地を管轄する家庭裁判所となり申立てを行います。
どこの家庭裁判所に申立てを行ってもいいというわけではありませんでの注意が必要です。
なお、家庭裁判所のホームページで住所地を管轄する家庭裁判所がどこになるのか調べることが可能です。

任意後見監督人の選任は申立ては誰が行うのか

任意後見法4条1項において任意後見監督人選任の審判の申立てを行う者は下記の者とされています。
①本人(任意後見契約の委任者)
※自己決定権尊重の観点から一般的にみると行為能力の制限を受けていても自ら有効に申立て手続行為を行うことが可能とされているため
②配偶者
③四親等内の親族
④任意後見契約の受任者

申立てを行う場合には提出書類はどのようなものが必要となるか

任意後見監督人選任申立の際に必要となる一般的な書類は以下のようになります。
但し、管轄する家庭裁判所によっては多少異なる場合もありますので事前に管轄家庭裁判所の窓口に確認して頂くか、後から不足書類を追加で提出する方法となります。

①申立書及び申立書付票(申立事情説明書等)
※付票に関しては本人以外の方が申立てを行う場合で申立てにあたっての本人に関する事情を記載する必要があります。

②任意後見受任者事情説明書
任意後見受任者と本人との関係や療養看護の方針や計画等や任意後見受任者についての経歴や収入といった受任者自身の事情に関する説明を記載する必要があります。

③医師からの診断書・付票等
医師からの所見や検査に関する実施の有無や本人の理解力・判断力・記憶力といった判定の根拠等についての記載したものが必要となります。
※診断書のフォームは家庭裁判所が作成している後見用のものを使用する必要がありますので注意が必要です。
※診断書以外にも介護利用者等は福祉関係者から医師が診断を行う際の補助資料となる福祉に関する認定の有無や本人の日常や生活状況や記載してもらう本人情報シート(付票)の提出が管轄家庭裁判所から求められるケースもあります。

④任意後見契約公正証書の写し
※公証役場で作成した任意後見契約書のコピーが必要です。

⑤財産目録及び付属資料
本人が所有している不動産、預貯金・現金、保険契約、株券等の各種金融資産や負債等の記載をした目録の提出が必要となります。
※付属資料としては不動産の3か月以内の登記事項証明書(登記簿)、評価証明書、預貯金の通帳コピー、保険証券等のコピー、株式の取引明細書等のコピー、負債がある場合には契約者・借入金額・返済期間・残額等が分かる契約書及び返済予定表等のコピーとなります。

⑥収支状況報告書及び付属資料
申立人が把握している本人の収入及び支出を記載した報告書が必要となります。
通帳や領収書、郵便物等を確認しながら把握できる範囲内で記載するようになります。
※付属資料としては年金・税金・保険料等といった通知書等の郵便物の収支に関する資料や不動産の賃貸契約書、給与明細、施設利用料や入院費、家賃・地代等の領収書、請求書、契約書等のコピーとなります。

⑦親族関係図
本人の配偶者や子供、両親、兄弟姉妹等の関係を記載して提出することになります。

⑧登記されていないことの証明書
法務局・地方法務局の本局で発行される証明書で今まで成年被後見人、被保佐人、被補助人とする記録がないことが記載されています。

⑨本人についての戸籍謄本及び住民票

⑩任意後見受任者についての住民票

申立てを行う際の費用について

①収入印紙代
※申立て費用として800円及び登記費用として1400円
②郵便切手代
※金種、枚数については事前に管轄の家庭裁判所に問い合わせをした方が確実です。
例:500円×3枚、82円×10枚、50円×20枚、10円×10枚、1円×10枚 等

申立てを行っても例外的に任意後見監督人の選任がなされない場合とは

任意後見が原則として法定後見に優先されるとする趣旨は、本人の自己決定権を尊重するためと考えられます。
つまり、本人が判断能力を有している間に自らの意思で信頼のおける任意後見受任者と契約を締結しておくわけですから、契約を結ばず判断能力を失ってしまった後に利害関係人が申立てを行う法定後見制度と比べると本人の意思が現れており、本人の意思を重視しているという点にあります。
但し、任意後見契約を結んだ場合であっても家庭裁判所が本人の利益のために特に必要と認められた場合には例外的に法定後見等の審判に移行されてしまう場合もあるため注意が必要となります。
一般的に考えられる例外的な場合とは下記のようなケースとなります。

任意後見契約の代理権目録で授権された代理権の範囲が狭すぎる内容となっている場合に本人の権利擁護が十分に図れない場合

任意後見人の場合だと本人の行った法律行為について直接的な取消権がないため、本人が頻繁に詐欺等の消費者被害にあっている場合等のケースでは法定後見に移行して代理人に同意権・取消権を与え保護する必要が生じている場合

任意後見監督人の主な職務とは

任意後見監督人の主な仕事としては任意後見人が本人のために行っている管理財産の収支に関する事務等を定期的に報告をうけ本人の利益が害されていないか等を調査確認して間接的に家庭裁判所へ報告を行います。
任意後見人の事務報告が頻繁に遅れてしまって、監督人からの報告を求める催促を頻繁に受けてしまったり、長期間報告を怠るといった事態に陥ってしまうと監督人から家庭裁判所に対し任意後見人の解任請求を受けてしまうこともあるため注意が必要です。
また、本人からあらかじめ授権されている代理権の範囲内にある重要な財産の処分(不動産等)等を行う場合であっても事前に監督人と協議のうえ同意を得たうえで行っていくという手順を
とることが実務上求められますので注意が必要です。

家庭裁判所が考慮する任意後見監督人の候補者とは

家庭裁判所が任意後見監督人の選任を行うに際して考慮する要素は下記のようなポイントがあります。
〇本人の心身の状態や生活及び財産状況
〇任意後見監督人となる者の職業及び経歴
〇監督人となる者と本人との利害関係の有無
〇本人の意見その他一切の事情
※本人の意見は考慮の要素とはなりますが、希望する監督人候補者が客観的に適任者でない場合もあるため家庭裁判所が意見に拘束されることはありません。
※その他一切の事情とは監督人候補者の心身の状態や財産状況、監督人候補者と本人との親族関係の有無等といったものが要素として考えられます。

選任審判にあたっての本人の同意や陳述聴取について

本人について

任意後見監督人の選任審判には原則として本人の同意が要件とされているため家庭裁判所は本人の意向や状態を把握するため面談を行い本人の陳述を聴取して同意について確認をすることが多くあります。
※但し、本人が意思表示できない場合には同意や、陳述を聴取しないで審判が行われることもあります。

任意後見人受任者について

任意後見監督人の選任審判には家庭裁判所は原則として任意後見受任者に対して任意後見契約の効力発生に関する意見等を聴取しています。

任意後見監督人の選任審判がされると

嘱託により登記がなされる

選任審判がされると家庭裁判所から監督人のほか本人及び任意後見受任者に告知がされ、任意後見監督人が選任された旨の任意後見監督人に関する登記が裁判所書記官の嘱託で成年後見登記事務を取り扱う法務局へ登記されます。

登記事項証明書の交付請求

監督人の選任審判がなされ嘱託で登記がされることで任意後見人となっている事実、本人から授与された代理権の範囲が記載された登記事項証明書を法務局から交付請求することが可能となり、任意後見人として本人の財産管理を公的に行っていくこととなります。

まとめ

あらかじめ判断能力があるうちに一身専属的な権利以外の委任事項を本人が自由に決めて信頼のおける者に任せることが出来る任意後見は本人の財産管理、保全や身上監護を円滑に行うためにメリットは多くあります。
ただし任意後見制度は注意すべきポイントや制限もあります。
認知症後も積極的な資産運用を継続しておきたい財産などがあれば家族信託などの制度を併用し信託契約で定めて家族に信託財産として資産を運用してもらい、死後に関しては遺言を残す方法など、各種制度の併用を行うことで総合的にカバーしていくことも可能となります。
このような制度の利用にあたっては本人や家族の意向や目的に沿った対策を検討しスキーム提案やリスク検討、具体的な手続きなど専門家のアドバイスが不可欠といえます。
将来の財産管理等に不安を感じていらっしゃる方は健康で判断能力がしっかりしているうちに専門家へまずは相談してみることをお勧め致します。

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