相続人に未成年者がいる場合の相続放棄手続きについて

司法書士山本宣行のコラムです。
ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。

配偶者の相続放棄にあたって子供が未成年者の場合

夫もしくは妻が亡くなり相続放棄の手続きを検討し申立てを行う場合に、未成年者の子供がいることで相続放棄の手続きになにか違いが出てくるのでしょうか。
財産上の行為である相続放棄の手続きにおいて家庭裁判所へ相続放棄の申立てを行う申述人は行為能力者でなければ有効に行うことができません。
そのため相続人に法律上の制限行為能力者とされる未成年者がいる場合の相続放棄の手続きを行う場合に、どのように行うのか下記に事例を挙げて説明をしていきたいと思います。

相続開始時に妻乙と未成年者である丙がいる場合の事例

未成年者丙が相続放棄の手続きを行う場合には親権者となる乙が未成年者丙の法定代理人として丙に代わって相続放棄の手続きを行うことが可能な場合とそうでない場合があるため注意が必要となります。

妻乙が未成年者丙とともに相続放棄を行う場合

親権者である乙自身も被相続人甲の相続放棄を行うため未成年者丙にとって不利益がないものと考えられるために法定代理人として相続放棄の申立てを丙の代わりに行うことが可能となります。

妻乙は相続放棄を行わず未成年者丙のみが相続放棄を行う場合

親権者である乙自身だけが相続し未成年者丙が相続放棄の手続きを行う場合は法律上、乙と丙の間で利益が相反するものと考えられるため、乙は法定代理人として相続放棄の申立てを丙の代わりに行うことが出来ません。
このような利益相反行為と考えられる場合には、まず家庭裁判所へ丙のために特別代理人を選任する手続きが必要となります。
ただし、既に未成年者の後見人が選任されている場合には、未成年後見人が関与して相続放棄の手続きを未成年者丙に代わって申述することも可能となります。
未成年後見人があらかじめ選任されていることは少ないため、まずは家庭裁判所へ特別代理人を選任する手続きが一般的といえるでしょう。

利益相反行為とその判断基準

民法826条では「親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」とさだめており利益相反行為とは親権者が利益となり未成年の子が不利益となる行為、親権に服する未成年の子が複数いて一方に利益となり他方に不利益となるような行為などで財産上・身分上の行為をいいます。
どのような場合に利益相反となるかについて判例は、「親権者が子を代理してした行為自体を外形的・客観的に考察して判定すべきであって、親権者の動機・意図をもって判定すべきでない」という形式的判断説に立っています。(参考 最判昭42・4・18民集21・3・671)
前述した事例の未成年者丙の共同相続人となる親権者乙の場合を形式的判断説に立って考えると未成年者丙のみが相続放棄を行う場合は親権者乙の相続分が増える関係にあることから利益相反関係が肯定されると考えられることになります。
したがって、親権者乙が自身の相続放棄のあと、もしくは同時に行う未成年者丙の相続放棄を代わりに行うことは放棄した丙の相続分が親権者である乙に帰属することにはならないため利益相反行為にはならないと考えられています。

未成年者の相続放棄の熟慮期間について

民法915条1項は相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から起算すると規定していますが民法917条で申述人が未成年者の場合には法定代理人が未成年者のために相続の開始があったことを知った時から起算されます。
仮に、両親が死亡したような場合に利害関係人の請求で家庭裁判所から未成年後見人が選任されると未成年後見人となる者が選任後に多額の債務の存在を調査確認した事情などを考慮し、未成年者のために相続の開始があったことを知った時からとして熟慮期間が起算するものと考えられます。

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