相続人に判断能力が無い人がいる場合の相続手続について

ご相談者の皆さまが疑問に思われるような法律手続きのお話しや普段聞き慣れない法律用語など身近な法律問題を取り上げて解説致します。

高齢化社会に伴う相続における遺産分割問題について

内閣府の65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計によりますと2012年は認知症高齢者数が462万人とされており、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症となる割合でしたが、近い将の2025年頃には約5人に1人になるのではないかとの推計もあり高齢者の家族や親族を含め、より身近で切実な問題となってくることが予想できます。
(参考 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_2_3.html) 相続が発生して公正証書や自筆の遺言書等が無い場合には、原則として法定相続人全員で遺産分割協議を行い遺産に関しては相続手続を行っていく必要があります。
相続手続を行うための遺産分割協議は相続人全員に判断能力があることが前提となっておりますから、相続人の中に認知症等で判断能力を失ってしまった方がいると手続を速やかに進めることは出来なくなってしまいます。
遺産分割協議書には相続人全員の実印の押印と印鑑証明書が必要になりますが、不動産の名義変更や預貯金や株式等の相続手続においても窓口で遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑証明書の提出が求められることになります。
本コラムでは相続人の中に認知症の方がいる場合において遺産分割協議を行う際に必要となる手続や注意すべきポイント等を説明させて頂きます。

遺産分割協議が自由に出来ないことで起こる弊害とは

遺産分割協議が自由にできない場合にどのような不都合が生じてしまうのが、下記に一例を挙げておりますので参考にしてみて下さい。
〇不動産がある場合には法定相続で共有名義になってしまう可能性がある
相続人の中に認知症の方がいて遺産分割協議が出来ない場合でも法定相続で判断能力のある相続人の1人から保存行為による相続登記を行うことは可能です。
但し、通常相続の登記申請を行った場合に名義人となる各相続人に管轄法務局から発行される登記識別情報(新しい権利証)は申請人とならなかった認知症の相続人には発行されません。
従来と変わりなく居住し続ける方であれば、問題はあまり無いといえそうですが、空き家になるため売却を検討する等の場合には売却時に認知症の方の登記識別情報が無いため、余計な手続や費用が増えてしまったり、そもそも判断能力が無いため売主として売買契約を結ぶことが厳しいことで相続登記が可能でも本来の目的を達成することが出来ない場合があるため注意が必要です。
〇相続税が発生する場合には納税で不利になってしまう可能性がある。
相続税が発生する場合には、通常は税理士などの専門家を交え、二次相続のシミュレーションや使える特例控除を検討しながら税金で極力損をしないように各相続人が取得する遺産分割の配分を決めていくことになります。
相続人の中に認知症の方がいれば、税務的にみて最適な遺産分割方法があったとしても自由に協議を行うことが出来なくなるため、結果として高額な税金を納めなければならなく可能性が出てきてしまいます。
また、遺産分割協議が進まないことで相続税の申告期限に間に合わなくなってしまうおそれもあるため注意が必要となります。

遺産分割協議が出来ないときは家庭裁判所に成年後見開始の申し立てを行う

判断能力の無い相続人がいて遺産分割協議ができない場合に進めていく現実的な手続としては成年後見制度の利用が一般的な方法といえます。
成年後見開始の申立てを行うことで家庭裁判所に後見人を選任してもらい後見人が本人に代わり遺産分割協議書に署名押印を行うことが可能となります。
但し、成年後見開始の申立てを行う前には最低限の確認しておくべき事項がありますので下記に挙げてある内容を理解して後見開始の申立てを検討した方がいいでしょう。
〇後見人に選任される者が必ず家族や親族であるとは限らない
後見開始の申立てには候補者として信頼のおける家族や親族を記載することが可能ですがあくまでも家庭裁判所の権限で後見人を選任しますので弁護士や司法書士等の第三者が選任されてしまう可能性が大いにあります。
家族が後見人に選任される場合でも家庭裁判所の判断で後見監督人が付いてしまうこともあります。
例え家族の意向にそわない場合でも申立てを取り下げることは出来ませんので注意が必要です。
〇第三者の後見人が選任される場合には報酬も発生する
第三者の後見人や監督人が付いてしまうと月々の報酬が発生してしまうことにも注意が必要です。
報酬額は家庭裁判所が本人の財産額を考慮して決めますが、後見人の職務は基本的には本人が死亡するまで続きますから月々の報酬や付加報酬などを考えるとトータルで多額の報酬費用が本人の財産から支出することになります。
また条件がありますが日常生活に必要となる財産を除いて他の財産を信託銀行などの金融機関へ信託する後見制度支援信託の決定がなされてしまうと信託報酬も別途発生するようになります。
〇同じ相続人となる家族が後見人に選任された場合でも遺産分割協議の代理はできない
認知症である相続人と子供などの他の相続人が被後見人と後見人の立場の場合には相続人という同じ立場である場合には外形的にみて利益が相反する立場となってしまいます。
これは遺産分割協議の内容に関係無く利益相反とみなされてしまうため、後見監督人が付いていない場合には別途遺産分割協議を代理する特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てを行い選任された特別代理人が遺産分割協議書へ署名押印していく必要がありますので注意が必要です。
特別代理人の申立てを家庭裁判所に行う際に資料として遺産分割協議書案を提出することになりますが本人が最低でも法定相続分以上の財産を取得していないと選任審判が下りないため、自由な意向で遺産分割協議を行うことはできないということになります。

後見開始申立てを行う場合には提出書類はどのようなものが必要となるか

後見開始申立の際に必要となる一般的な書類は以下のようになります。
但し、管轄する家庭裁判所によっては多少異なる場合もありますので事前に管轄家庭裁判所の窓口に確認して頂くか、後から不足書類を追加で提出する方法となります。

①申立書及び申立書付票(申立事情説明書等)
※付票に関しては本人以外の方が申立てを行う場合で申立てにあたっての本人に関する事情を記載する必要があります。
②医師からの診断書・付票等
医師からの所見や検査に関する実施の有無や本人の理解力・判断力・記憶力といった判定の根拠等についての記載したものが必要となります。
※診断書のフォームは家庭裁判所が作成している後見用のものを使用する必要がありますので注意が必要です。
※診断書以外にも介護利用者等は福祉関係者から医師が診断を行う際の補助資料となる福祉に関する認定の有無や本人の日常や生活状況や記載してもらう本人情報シート(付票)の提出が管轄家庭裁判所から求められるケースもあります。
③財産目録及び付属資料
本人が所有している不動産、預貯金・現金、保険契約、株券等の各種金融資産や負債等の記載をした目録の提出が必要となります。
※付属資料としては不動産の3か月以内の登記事項証明書(登記簿)、評価証明書、預貯金の通帳コピー、保険証券等のコピー、株式の取引明細書等のコピー、負債がある場合には契約者・借入金額・返済期間・残額等が分かる契約書及び返済予定表等のコピーとなります。
④収支状況報告書及び付属資料
申立人が把握している本人の収入及び支出を記載した報告書が必要となります。
通帳や領収書、郵便物等を確認しながら把握できる範囲内で記載するようになります。
※付属資料としては年金・税金・保険料等といった通知書等の郵便物の収支に関する資料や不動産の賃貸契約書、給与明細、施設利用料や入院費、家賃・地代等の領収書、請求書、契約書等のコピーとなります。
⑤親族関係図
本人の配偶者や子供、両親、兄弟姉妹等の関係を記載して提出することになります。
⑥親族の同意書
⑦登記されていないことの証明書
法務局・地方法務局の本局で発行される証明書で今まで成年被後見人、被保佐人、被補助人とする記録がないことが記載されています。
⑧本人についての戸籍謄本及び住民票
⑨後見人候補者についての住民票

後見開始申立てを行う際の費用について

①収入印紙代
※申立て費用として800円、予納収入印紙2600円
②郵便切手代
※金種、枚数については事前に管轄の家庭裁判所に問い合わせをした方が確実です。
③鑑定料、官報広告料等

まとめ

相続人の中に認知症などの判断能力が無い方がいると、家族間が円満であっても遺産分割協議が進まないことで、別途煩雑な手続のため時間や労力を費やし、費用も多くかかってしまうということがお分かり頂けたのではないでしょうか。
このように余計な費用や時間労力をかけないためにも、健康で元気なうちに生前の対策を行っておくことが重要であるといえます。
本人が自由に決めて信頼のおける者に任せることが出来る任意後見や遺言書を書いておくことで、認知症になった家族がいても円滑に手続を行えることが可能となるのは、家族にとって非常にメリットのあることだと思われます。
将来の相続手続・遺産分割や財産管理等に不安を感じていらっしゃる方は健康で判断能力がしっかりしているうちに専門家へまずは相談してみることをお勧め致します。

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